「父が誤嚥性肺炎と言われた。入院すると、そのまま弱ってしまうのではないか」「できれば家で治療を続けたい」。高齢のご家族を支える方から、こうしたご相談をよく受けます。
誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液、胃の内容物が気管に入り、肺に炎症が起こる病気です。高齢になると、飲み込む力や咳をする力が弱まるため、起こりやすくなります。そして、一度かかった方は繰り返しやすいという特徴があります。
状態によっては、訪問診療で自宅にいながら治療を続けることもできます。一方で、入院して治療したほうがよい場合もあります。大切なのは、その見極めを早めに医師と相談すること、そして次の肺炎を防ぐ工夫を毎日の生活に取り入れることです。
この記事では、名古屋で訪問診療を行うごうホームクリニックが、誤嚥性肺炎の在宅治療でできること、入院を考えるべき状態、家族が気づきたいサイン、繰り返さないための工夫をお伝えします。
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ごうホームクリニックでは在宅医療・介護の知識をpodcastで配信しています。本記事のテーマをpodcastで詳しく解説していますので、あわせてご視聴ください。
目次
■誤嚥性肺炎は、家で治療できることもある
◎訪問診療でできる治療
状態が比較的落ち着いていれば、ご自宅で次のような治療を行えることがあります。
- 抗菌薬(抗生物質)の治療:飲み薬のほか、飲み込みが難しい方には点滴や注射で行うこともあります
- 酸素:酸素が足りないときは、自宅に酸素の機械を置いて使います
- 水分・栄養の補給:食事や飲み物がとれないときは、点滴で補います
- 痰(たん)への対応:体の向きを変える、痰を出しやすくする、必要に応じて吸引する
- 食事の一時中断と再開:いったん口から食べるのを休み、状態を見ながら安全な形で再開する
訪問看護と連携し、医師が訪問しない日も、体温や呼吸、食事の様子を見守ります。

◎家で治療するメリット
高齢の方は、入院による環境の変化で、混乱したり(せん妄)、足腰が弱ったりすることがあります。住み慣れた家で治療を続けることで、こうした変化を避けやすくなります。ご本人が家で過ごしたいと望んでいる場合には、その思いを大切にした治療を考えられます。
◎ただし、家での治療が向かない場合もある
家での治療を続けるには、ご本人の状態が比較的安定していること、医師や訪問看護がすぐに対応できること、そして家族が不安なく見守れることが前提になります。次の章で紹介するような状態では、入院での治療を考えます。
■入院を考えたほうがよい状態
◎体の状態から考えること
日本呼吸器学会のガイドラインでは、肺炎の重さを判断する目安として、年齢、脱水、酸素の状態(呼吸の速さを含む)、意識、血圧の項目が示されています。当てはまる項目が多いほど重症と考え、入院での治療を検討します。
家族から見てわかるサインとしては、次のようなものがあります。
- 息が苦しそうで、肩で息をしている、会話が途切れ途切れになる
- 唇や爪の色が紫っぽい
- 呼びかけへの反応が鈍い、ぼんやりしている
- 水分がほとんどとれない
- ぐったりして、普段より明らかに元気がない
このような様子があるときは、すぐに主治医に連絡してください。意識がない、呼吸がとても苦しそうなど、命に関わる様子があれば、迷わず救急車を呼んでください。
◎家族の状況や、ご本人の希望も判断の材料になる
夜中も見守りが必要な状態が続くと、家族の負担は大きくなります。家族が不安で看られない、介護の手が足りない、という場合も、入院を考える理由になります。
一方で、人生の最終段階が近いと考えられる方では、医学的には入院が勧められる状態でも、ご本人の希望に沿って家で治療やケアを続けることを選ぶ場合もあります。どこで、どこまでの治療を受けたいかは、元気なうちから家族や主治医と話し合っておくこと(人生会議・ACP)が大切です。
■家族が気づきたい「いつもと違う」サイン
◎高齢の方の肺炎は、熱や咳が目立たないことがある
高齢の方の肺炎は、高い熱や激しい咳といった典型的な症状が出ないことがあります。代わりに、次のような「いつもと違う」様子が最初のサインになることがあります。
- なんとなく元気がない、ぼんやりしている
- 食欲が落ちた、食事に時間がかかるようになった
- 痰がからんだような声、ゴロゴロした呼吸の音
- 微熱が続く
- 呼吸が少し速い
「いつもの風邪だろう」「年のせいだろう」と思わずに、早めに主治医や訪問看護に伝えてください。
◎むせない誤嚥もある
食事中にむせることは誤嚥のサインですが、むせずに気管に入ってしまう誤嚥もあります。眠っている間に唾液が少しずつ気管に入ることもあり、食事の場面だけ気をつけていても防ぎきれないことがあります。むせていないから大丈夫、とは言い切れません。
飲み込みの状態が気になるときは、自宅で行える嚥下内視鏡検査という方法もあります。詳しくは名古屋の訪問診療で受ける嚥下内視鏡検査(VE)で解説しています。
■繰り返さないために、毎日できること
◎口の中を清潔に保つ
誤嚥性肺炎の多くは、口の中の細菌が唾液と一緒に気管に入ることで起こります。口の中を清潔に保つことは、肺炎を防ぐための基本です。
- 歯みがきに加えて、舌や頬の内側、入れ歯の手入れもする
- 歯がない方や食事をしていない方も、口のケアは必要
- 自分で難しい場合は、訪問歯科や訪問看護に相談する
◎食べるときの姿勢と、食べ物の形
- 食事は、できるだけ体を起こし、少しあごを引いた姿勢でとる
- 一口の量を少なめにし、ゆっくり食べる
- 飲み込みにくい方には、とろみをつける、やわらかく調理するなど、状態に合った食べ物の形にする
- 食後すぐに横にならず、しばらく体を起こしておく
どのような形の食事が合っているかは、人によって違います。言語聴覚士や管理栄養士とも相談しながら決めていきます。
◎薬の見直しも大切
眠気を起こす薬や、口が乾きやすくなる薬は、飲み込む力や咳をする力を弱めることがあります。薬が多い方は、誤嚥につながりやすい薬がないかを主治医と一緒に見直しましょう。ご自身の判断で薬をやめるのは危険なので、気になる薬があればご相談ください。
◎体力と、ワクチン
飲み込みに使う筋肉も、体の筋肉と同じように、栄養が足りなかったり動かなかったりすると弱くなります。食事の量や体重の変化にも気を配りましょう。また、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなど、肺炎の予防に関わるワクチンについても、主治医に相談してください。
◎退院してからしばらくは、特に注意
肺炎で入院したあとは、体力や飲み込む力が落ちていることが多く、退院後しばらくは再び肺炎を起こしやすい時期です。退院するときは、食事の形や姿勢、口のケアの方法など、病院で指導されたことを確認し、訪問診療や訪問看護に引き継いでもらうと安心です。
■「もう口から食べられないの?」と不安になったときに
誤嚥性肺炎を繰り返すと、「もう口から食べさせないほうがいいのでは」と悩むご家族は少なくありません。食べることは、栄養をとるだけでなく、ご本人の楽しみや生きる張り合いでもあります。
食べる量や形を工夫しながら、安全に口から食べる時間を残せないかを一緒に考えます。胃ろうなどの別の栄養の方法を考えるかどうかも含めて、ご本人の思いや、これまで大切にしてきたことを手がかりに、ご家族と話し合いながら決めていきます。
■訪問診療を受けるには
通院が難しく、誤嚥性肺炎を繰り返している、退院後の生活が心配、という方は、訪問診療を検討してください。当院では24時間連絡を受けられる体制をとり、急な発熱や呼吸の変化にも、往診や病院との連携で対応します。ご家族、ケアマネジャー、病院の相談員など、どなたからでもご相談いただけます。
■よくある質問
◎誤嚥性肺炎になったら、必ず入院しなければいけませんか?
必ずではありません。状態が比較的落ち着いていて、医師や訪問看護がすぐ対応でき、家族も見守れる場合には、家で治療を続けられることがあります。ただし、呼吸が苦しい、意識がぼんやりしている、水分がとれないといった場合は、入院での治療を考えます。
◎家で点滴はできますか?
できます。抗菌薬や水分の点滴を、ご自宅で行うことがあります。点滴の間の見守りは、訪問看護と連携して行います。
◎肺炎のあと、いつから食事を再開できますか?
熱や呼吸の状態が落ち着き、飲み込みの状態を確認してから、少量のやわらかいものから始めることが一般的です。再開の時期や食べ物の形は人によって違うので、医師や言語聴覚士と相談しながら進めます。
◎口のケアは、どのくらいの頻度で行えばよいですか?
毎食後と寝る前に行うのが理想です。難しい場合でも、1日1回は丁寧に行い、特に寝る前のケアを大切にしてください。やり方がわからないときは、訪問歯科や訪問看護に相談しましょう。
◎誤嚥性肺炎を繰り返しています。どうすればよいですか?
繰り返す背景には、飲み込む力の低下、口の中の状態、薬の影響、体力の低下など、いくつかの原因が重なっていることが多いです。一つずつ見直し、ご本人とご家族の希望に沿った方法を一緒に考えていきましょう。
まずは状況をお聞かせください
訪問診療の対象か分からない段階でも大丈夫です。通院のしづらさや介護状況を確認します。
ごうホームクリニック
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ごうホームクリニック
院長 伊藤剛

