「親の通院がそろそろ難しい」「退院後の生活をどう支えていけばよいか」。そう感じ始めたとき、多くのご家族が最初にぶつかるのが、在宅主治医をどう選ぶかという問題です。
訪問診療を担う医師は近年、急速に増えました。しかし、ご家族の側からは「何を基準に選べばよいのか」が見えにくいのも事実です。複数の医療機関を比べても、表面上は似たような説明ばかり並びます。
実は、国は在宅医療の質を評価する具体的な指標を整備しています。2026年の診療報酬改定で再編された 「在宅医療充実体制加算」 がそれです。この指標を知っておくと、医療機関を比べる物差しが手に入ります。
名古屋市天白区を拠点に訪問診療を行うごうホームクリニックが、患者・家族の立場で押さえたい在宅主治医の選び方を整理しました。事前面談で確認すべき質問や、国の最新動向もふまえてお伝えします。
🎧 この記事の元になったpodcast
ごうホームクリニックでは在宅医療・介護の知識をpodcastで配信しています。本記事のテーマをpodcastで詳しく解説していますので、あわせてご視聴ください。
目次
■在宅主治医を探す3つの入口
訪問診療を始めるとき、まず大切なのは「どこに相談するか」です。代表的な入口は3つあります。
◎ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
最も近道なのは、地域のケアマネ(介護支援専門員)への相談です。ケアマネは地域ごとの訪問診療クリニックの情報を持ち、各医療機関の診療スタイルや得意分野も把握しています。
担当ケアマネがまだいない場合は、お住まいの地域包括支援センターが入り口になります。市役所の介護保険担当窓口でも紹介を受けられます。

◎現在の主治医に紹介してもらう
長く通院されてきた病院の主治医に「そろそろ在宅に切り替えたい」と相談する方法もあります。多くの病院には「医療連携室」や「相談室」があり、医療ソーシャルワーカーが在宅医療への移行を支援してくれます。
担当医からの紹介であれば、これまでの病状や経過も自然に在宅主治医へ引き継がれます。そのため、移行が非常にスムーズです。
◎インターネットで地域の訪問診療クリニックを直接調べる
ご自宅の近くにある訪問診療クリニックを検索し、事前面談を申し込む方法もあります。事前面談では医療機関の体制や考え方を直接確認できます。可能であれば、複数のクリニックを比較してみてください。
■良い在宅主治医を見分ける3つの基本視点
医療機関選びで多くのご家族が見落としがちなポイントが3つあります。常勤医師の体制、夜間休日の対応、そして看取りの実績です。
◎常勤医師がしっかりいる体制か
訪問診療を行うクリニックの中には、院長以外は非常勤医師に依存し、日替わりで違う医師が担当する形式の医療機関もあります。
緊急時にあわてないためには、患者さんの情報を継続的に共有できる常勤医師が中心となって診療しているかを確認したいところです。常勤体制の厚みは、そのまま情報共有のなめらかさに直結します。
◎夜間・休日も自院の医師が対応しているか
「24時間365日対応」をうたっていても、実際の夜間休日はコールセンター対応や非常勤医師に委ねている医療機関も少なくありません。中には「重症かもしれない、救急車で病院に行ってください」と案内されるケースもあります。
事前面談では、夜間に電話したとき「誰が」電話を取り、「誰が」訪問してくれるのかを必ず確認してください。
◎最期まで自宅で診た実績があるか
看取りまでを自宅で完結できる体制は、医師の技術と組織の覚悟がそろって初めて成立します。
「途中で病院に戻すこともあり得る」のは当然です。しかし、ご家族が望めば最期まで自宅で診られる選択肢を持っているかどうかは、大きな違いになります。
■2026年診療報酬改定が示す「質の高い在宅医療」の方向性
2026年の診療報酬改定で、国は 「在宅医療充実体制加算」 という新しい評価項目を整備しました。これは、在宅医療の質を国が制度として認めるための施設基準です。
算定の可否にかかわらず、患者・家族にとって「医療機関を比べる物差し」として参考になるものなので、概要を押さえておきましょう。
◎加算が評価する6つの質の軸
国がこの加算で評価しているのは、おおむね次の6つの軸です。
① 重症・終末期への対応力
看取りや緊急往診の実績、重症患者の割合などを年単位で評価
② 24時間体制の実質的な質
担当医の氏名や担当日を、患家にあらかじめ文書で伝えることを求める
③ 情報の継続性
往診を担う医師は、事前に常勤医と直接、診療方針を共有する仕組み
④ 多職種・多機関との連携
ICTを活用した情報連携を必須化(在宅医療情報連携加算と紐付け)
⑤ 緩和ケアの実践力
緩和ケア研修を修了した医師の配置と、オピオイドを用いた在宅疼痛管理の実績を求める
⑥ 次世代医師の育成
医学生・研修医・専攻医を在宅で受け入れる教育体制を求める
◎患者・家族にとって何が大切か
注目したいのは、この加算が 「数」だけでなく「プロセス」を評価している 点です。
たとえば「担当医の氏名と当番日を、あらかじめ患家へ文書で渡す」「往診を担う医師は事前に常勤医と直接、診療方針を確認する」といった項目があります。
つまり国は、「夜間に電話したら知らない医師が来た」「方針が共有されていなかった」という、ご家族が不安を抱きやすい場面を、制度として減らそうとしています。事前面談では、こうした運用の細部を確認することが、医療機関の質を見る手がかりになります。
◎加算の有無だけで判断しないこと
ただし、加算の算定にはいくつもの施設基準があります。たとえば「常勤医師の人数」「医師1人あたりの担当患者数の上限」「年間の看取り件数・緊急往診件数」「麻薬(オピオイド)を用いた在宅疼痛管理の実績」「緩和ケア研修を修了した医師の配置」「医学生・研修医の受入実績」など、医療機関の規模や診療体制に関わる細かな条件です。
地域に必要な訪問診療を担いながら、規模や体制の都合で算定要件を満たせない医療機関も数多くあります。加算の有無は一つの参考指標であり、実際の対応の質は事前面談での具体的な確認のほうが重要だと考えてください。
■事前面談で確認したい5つの質問
事前面談に行く際は、次の5点を直接たずねてみてください。回答の歯切れの良さは、そのまま医療機関の体制の整い方を反映します。
- 医師体制と当番制:常勤医師は何名いますか。当番の決め方は。
- 夜間・休日の連絡先:電話したらどなたが出ますか。自院の医師が直接対応してくれますか。
- 看取りや急変時の対応:自宅での看取りはどう支援していますか。急変時の判断はどう行いますか。
- 多職種連携の実態:訪問看護・ケアマネ・薬局との情報共有はどのように行っていますか。
- 価値観の受け止め方:「途中で病院に戻りたい」「やはり施設にしたい」と言ったら、どう対応してくれますか。
判断基準は 「誰が・どの頻度で・どんな手順で」が伴って語られるか です。
たとえば「24時間対応しています」「ご家族のご希望に沿います」のように主語と段取りが抜けた一般論しか返ってこない場合、運用が言語化されていないサインかもしれません。
一方で「夜間は当番医のA医師がコールバックし、必要があれば◯分以内に訪問します」「終末期は訪問頻度を週◯回まで増やし、夜間は担当看護師とペアで電話対応します」のように、人・頻度・手順がセットで語られる医療機関は、現場で同じ会話を何度も経験してきた組織だと判断できます。
◎ごうホームクリニックの場合(参考)
ご参考までに、ごうホームクリニックがこの3要素をどう運用しているかをお伝えします。比較の物差しとして、他の医療機関にも同じ粒度で確認してみてください。
- オンコール体制:夜間・休日のファーストコールは院長が、セカンドコールは看護主任が常時担当しています
- 当直体制:スポット当直医(外部派遣の単発対応医)は採用していません。当院の常勤医と、当院が直接雇用している非常勤医師のみで夜間体制を組んでいます
- 往診担当医の事前開示:往診担当医一覧 として、担当する医師を一覧でご確認いただけます
- 診療実績の公開:年間の看取り件数・緊急往診件数・在宅患者数といった具体的な数字は、訪問診療クリニックを横断的に紹介する第三者サイト 「おうちde医療」のごうホームクリニック紹介ページ でご確認いただけます
つまり、「夜間に電話したら、ごうホームクリニックの誰かが必ず対応する」「往診に来る医師がどなたか、事前にご家族が把握できる」という運用を、組織の標準形にしています。
■患者・家族の価値観を起点にする
最後に、もっとも大切な視点をお伝えします。
◎「病院に戻りたい」と言える関係性をつくる
在宅医療を続けていく中で、ご本人やご家族の気持ちは時に揺らぎます。「やはり病院に戻りたい」「一時的に入院したい」「施設に入所したい」と感じることは、決して悪いことではありません。
むしろ、そうした気持ちを率直に言える関係性こそ、在宅医療の質を支える基盤です。ごうホームクリニックでは、ご家族の「なんとなく変」という直感も大切なサインとして受け止め、その時々のご希望に柔軟に寄り添う姿勢を大切にしています。
◎家族の生活も守るのが在宅医療の役割
在宅主治医は、患者さんの病状を支えるだけでなく、介護にあたるご家族の生活を守る存在でもあります。「家族が倒れない医療」をどう設計してくれるかは、医師の力量と組織の余裕に直結します。
ごうホームクリニックは、名古屋市16区と日進市・東郷町・豊明市・刈谷市・知立市を訪問エリアとし、多職種連携を中心に据えた診療を行っています。在宅主治医をお探しの方は、ぜひ事前面談でクリニックの雰囲気や体制を直接ご確認ください。
■よくある質問(FAQ)
◎現在の主治医に在宅切替を伝えるのが気まずいのですが
長くお世話になった先生に対して気が引けるのは自然な感情です。ただ、患者さんを思う医師であれば、在宅医療への切替を歓迎してくれるはずです。むしろ責任を持って情報を引き継いでくれることが多く、移行はスムーズに進みます。
◎複数の在宅主治医を比較してもよいですか
もちろん大丈夫です。むしろ事前面談を複数の医療機関で行い、体制や考え方の違いを比べてから決めることをおすすめします。在宅主治医とはこれから長く付き合うことになるため、納得して選んでください。
◎途中で在宅医を変えることはできますか
可能です。ご家族の介護環境や患者さんの状態、価値観は時間とともに変わります。違和感が続くようであれば、ケアマネジャーに相談し、医療機関の変更を検討してください。
◎「在宅医療充実体制加算」を算定していない医療機関は質が低いのですか
そうとは限りません。前述の通り、この加算には複数の前提条件があり、規模や体制の都合で要件を満たせない医療機関も多くあります。加算の有無は一つの参考指標として捉え、事前面談での実際の対応や説明の具体性で判断してください。
◎ごうホームクリニックでは在宅主治医の相談はできますか
はい、事前のご相談・面談を承っています。訪問診療への切替をご検討中の方、現在のクリニックから変更をご検討中の方、いずれもお気軽にお問い合わせください。ご家族の状況をうかがった上で、最適な体制をご提案します。
📞 お気軽にご相談ください
訪問診療についてのご質問・ご相談を承ります。まずはお話をお聞かせください。
ごうホームクリニック
〒468-0015 愛知県名古屋市天白区原1丁目1410 サンモール原103
TEL: 052-803-5005 / 受付: 平日 8:30〜17:30

ごうホームクリニック
院長 伊藤剛

