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改正個人情報保護法が成立|在宅医療の患者情報・カルテの取り扱いはどう変わる?

2026年7月10日、個人情報保護法の改正法が参議院本会議で可決され、成立しました。報道では「病歴収集、本人同意不要に」という見出しが並び、驚かれた方も多いのではないでしょうか。

「カルテの中身が、知らないうちにAIの開発会社へ渡ってしまうのだろうか」。そんな不安を抱いたご家族や、ご利用者から質問を受けて答えに迷ったケアマネジャーの方もいらっしゃると思います。

結論からお伝えすると、在宅医療の現場で今すぐ何かが変わることはありません。施行は公布から2年以内と定められており、日常の多職種連携のルールも今回の改正の対象外です。そして、ごうホームクリニックが患者さんの情報を外部のAI開発などに提供する予定は、現時点でありません。

この記事では、改正で何が決まったのか、何が変わらないのか、そして当院がどう対応するのかを、ご家族と連携機関の皆様に向けて整理してお伝えします。

■本記事の要点

本記事の核となるポイントです。

  • 改正個人情報保護法は2026年7月10日に成立。施行は公布から2年以内で、今すぐ変わることはない
  • 統計・AI開発目的に限り本人同意なしの第三者提供を認める特例が新設。公表や書面合意などの条件付き
  • ケアマネジャー・訪問看護との日常の情報共有ルールは変わらない
  • 医師・看護師の守秘義務は別の法律でそのまま残る
  • ごうホームクリニックは現時点で外部への提供予定なし。方針を変える場合は事前にお知らせする

■改正個人情報保護法とは?2026年7月に成立した改正の全体像

◎病歴はこれまでどおり「特に守られる情報」

病歴は、個人情報保護法で「要配慮個人情報」と呼ばれる区分に含まれます。信条や犯罪歴と並んで、取り扱いを誤ると差別や不利益につながりかねない情報として、個人情報の中でも最も厳格に保護されてきました。取得するときも、外部へ提供するときも、原則として本人の同意が必要です。この大原則そのものは、改正後も維持されます。

改正個人情報保護法 医療|ごうホームクリニック 本文イメージ

◎新設された「統計作成等の特例」とは

今回の改正の中心は、この原則に対する新しい例外です。統計情報の作成や、AIに学習させるためのデータとしての利用のように、「特定の個人と結びつけない使い方しかしないことが担保されている」場合に限って、本人の同意を得ずに個人データを第三者へ提供できるようになります。病歴などの要配慮個人情報も対象に含まれます。

ここでいう統計情報とは、たとえば「70代の在宅患者で心不全のある方の平均通院回数」のような、誰か一人の情報としては取り出せない集計結果のことです。「〇〇さんの病歴」という形のまま誰かに渡すことを認める制度ではありません。

◎特例には条件がある

無条件に提供できるわけではありません。個人情報保護委員会の法案資料では、次の条件が示されています。

  • 何をどのように提供するかなど、一定の事項を公表すること
  • 「統計情報等の作成のみを目的とする提供」であることを、提供元と提供先が書面で合意すること
  • 提供先での目的外利用と再提供の禁止
  • 安全管理措置の義務は従来どおり

◎氏名の扱い(匿名化)のルールはこれから決まる

国会審議で最も議論が集中したのは、提供の際に氏名などを削除する義務が法律の条文に書かれなかった点です。この部分は、今後定められる個人情報保護委員会の規則やガイドラインに委ねられました。

医療界には強い懸念があり、全国保険医団体連合会は法案段階から反対の声明を出しています。参議院の採決も賛成146・反対94と判断が分かれました。厚生労働大臣は国会で、規則・ガイドラインの策定に厚労省として主体的に関わり、不安や懸念の解消に取り組む旨を答弁しています。医療分野の具体的な運用ルール(医療・介護ガイダンスの改定)は、これから示されることになります。

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■医療機関と患者さんに関係するその他の改正点

◎病院・診療所による研究活動の位置づけが明確になった

研究目的であれば同意なしにデータを扱える「学術研究の例外」について、対象となる「学術研究機関等」に、病院・診療所など医療の提供を目的とする機関・団体が含まれることが明記されました。これまでこの例外は大学や研究所が中心で、一般の医療機関が使えるかは解釈が分かれていました。

症例の分析や学会発表、複数の医療機関が協力する共同研究は、よりよい治療やケアとして患者さんに還元されていく活動です。その法的な足場が明確になりました。

◎課徴金制度が新設された

個人データを不正に売り渡すなど、悪質な違反で利益を得た事業者には、その利益に相当する額の納付が命じられるようになります。対象は本人の数1,000人を基準とする大規模な事案に限られますが、利用を広げる特例と同時に、違反への金銭的な制裁も初めて導入されました。患者さんの側から見れば、データを預ける先を守るルールが一段強くなった改正です。

◎16歳未満の子どもの同意は保護者が窓口に

お子さんの個人情報については、同意やお知らせの相手が保護者(法定代理人)であることが法律上はっきりしました。小児在宅医療を受けているご家庭では、今後、同意書や説明文書の様式が新しくなる場合があります。

◎情報漏えいが起きたときの通知はどうなる?

漏えいが起きた場合に本人へ通知する義務は、今後も残ります。緩和されるのは「権利利益を害するおそれが少ない」と認められる軽微なケースに限られ、重大な漏えいでお知らせが省略されることはありません。

■変わらないこと|多職種連携と守秘義務

◎ケアマネジャー・訪問看護との情報共有は従来どおり

在宅医療は、ケアマネジャー・訪問看護・薬局との日常的な情報共有で成り立っています。この多職種連携における個人情報の取り扱いルールは、今回の改正では変更されていません。サービス担当者会議や退院前カンファレンスでの情報のやり取りは、これまでと同じ枠組みで続きます。

◎医師・看護師の守秘義務はそのまま残る

医師の守秘義務(刑法)や看護師の守秘義務(保健師助産師看護師法)は、個人情報保護法とは別の法律であり、改正後もそのまま適用されます。「個人情報保護法上は提供できる」ことと「守秘義務の観点から問題がない」ことは別の論点で、この整理は国会でも議論の対象になりました。

◎「提供できるようになる」ことと「提供する」ことは別

報道の見出しにある「本人同意不要に」を正確に読み替えると、「同意を取らない外部提供が、法律上は可能になる」です。実際に提供するかどうかを決めるのは、データを保有するそれぞれの医療機関です。提供は義務ではなく、法律の施行によって自動的にデータが外部へ流れる仕組みでもありません。

■ごうホームクリニックの方針

当院の対応を明確にお伝えします。

  • 患者さんの診療情報を、統計作成やAI開発を目的として外部に提供する予定は、現時点でありません
  • 今後、個人情報保護委員会の規則と医療・介護ガイダンスの改定内容を確認したうえで、法人としての方針を決定します。方針を変更する場合は、法律が定める公表義務に従い、事前にお知らせします
  • 施行までに、院内掲示・プライバシーポリシー・重要事項説明書の点検を行います

ご不明な点や気になることがあれば、訪問時に医師・スタッフへ直接お尋ねください。

■連携機関の皆様へ|施行までに確認しておきたいこと

訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所の皆様にも、施行を見据えて確認をおすすめしたい点があります。

まず、ご利用者やご家族から「病歴がAIに使われるのか」と聞かれたときの説明です。「施行はまだ先であること」「提供するかどうかは各医療機関が判断すること」「日常の連携は変わらないこと」の3点をお伝えいただければ、当面の説明としては十分です。

実務面では、段階的に次の3点の確認をおすすめします。

第一に、電子カルテ・請求ソフト・AI文字起こしなどのシステムベンダーから届く利用規約改定の通知です。施行後は、預かったデータを統計・AI開発に利用する旨の規約変更が法的に成立し得るため、通知を読み飛ばさない運用が新たに重要になります。

第二に、規則・ガイドラインが公表された段階(2027年ごろと見込まれます)での、委託契約のデータ利用目的条項の確認と、特例を使うか使わないかの事業所方針の決定です。

第三に、施行までの掲示物・同意書様式の改定と職員への周知です。いずれも今すぐ着手する必要はありません。当院でも、医療・介護ガイダンスの改定案が出た段階で、あらためて現場向けの整理をお届けする予定です。

■よくある質問(FAQ)

ご家族や連携機関の皆様から寄せられそうなご質問をまとめました。

◎Q1. カルテの病歴が、同意なしにAI開発へ使われてしまうのですか?

改正法は成立しましたが、施行は公布から2年以内(2028年ごろの見込み)で、まだ先です。施行後も、外部への提供を行うかどうかは各医療機関が判断し、行う場合には公表が義務づけられます。ごうホームクリニックでは現時点で提供の予定はありません。

◎Q2. 提供される場合、名前は消されないのですか?

氏名の削除(匿名化)を法律に明記するかどうかは国会でも大きな論点となり、具体的な安全対策のルールは今後の規則・ガイドラインで定められることになりました。当院はその内容を確認したうえで対応方針を決めます。

◎Q3. ケアマネジャーとして医療情報をいただく流れは変わりますか?

変わりません。多職種連携における情報共有のルールは今回の改正の対象外で、これまでどおりの運用が続きます。

◎Q4. 医療機関や事業所として、いま準備すべきことはありますか?

現時点で必須の対応はありません。聞かれたときの説明を職場内で共有しておくことと、ベンダーからの規約変更通知を見落とさないこと。この2点で足ります。掲示や様式、プライバシーポリシーの改定は、規則と医療・介護ガイダンスの改定が公表されてからで間に合います。

■参考・出典

  • 参議院 議案情報「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」(第221回国会 閣法第54号、2026年7月10日参議院本会議可決・成立) https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221054.htm
  • 個人情報保護委員会「個人情報保護法等の一部を改正する法律案について」(令和8年4月・記者配布資料) https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260407_kisyahaifusiryou.pdf
  • 個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案』の閣議決定について」(令和8年4月7日) https://www.ppc.go.jp/news/press/2026/260407/
  • 時事通信「個人情報、AI開発へ規制緩和 改正法成立、データ活用促進」(2026年7月10日) https://www.jiji.com/jc/article?k=2026071000131&g=pol
  • 沖縄タイムス(共同通信配信)「病歴収集、本人同意不要に 改正個人情報保護法が成立」(2026年7月10日) https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1877777
  • 全国保険医団体連合会「【声明】病歴など要配慮個人情報の本人同意なき利活用に舵を切る 個人情報保護法『改悪法案』の廃案を求めます」(2026年6月15日) https://hodanren.doc-net.or.jp/info/declaration/2026-06-15/
  • 全国保険医団体連合会「【個人情報保護法改正】上野厚労相『適切な運用が重要、法改正後に不安や懸念を解消したい』」(2026年7月10日) https://hodanren.doc-net.or.jp/info/news/2026-07-10/

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ごうホームクリニック 院長 伊藤剛

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