「最近、食事中によくむせるようになった」「肺炎で何度も入院を繰り返している」――名古屋市内でご家族を介護されている方から、ごうホームクリニックにこうしたご相談をいただきます。
加齢にともない、飲み込み(嚥下)の力は少しずつ弱くなります。とくに気がかりなのは、誤嚥性肺炎です。高齢者の死亡原因として上位にあり、繰り返すうちに体力を奪っていきます。
しかし、「どこまで喉が弱っているか」「どんな食べ方なら安全か」を、見た目だけで正確に判断することはできません。そこで役立つのが嚥下内視鏡検査(VE)です。鉛筆より細いカメラで、のどの動きと飲み込みを直接観察します。
この記事では、ごうホームクリニックがご自宅で実施している嚥下内視鏡検査について、検査の中身・当日の流れ・結果の活かし方を、ご家族の目線でやさしくまとめます。「最後まで口から食べたい」というご本人の願いを支える、実践的な道しるべになれば幸いです。
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ごうホームクリニックでは在宅医療・介護の知識をpodcastで配信しています。本記事のテーマをpodcastで詳しく解説していますので、あわせてご視聴ください。
目次
■嚥下内視鏡検査(VE)とは|飲み込みを「見える化」する検査
嚥下内視鏡検査は、口の奥(咽頭・喉頭)の動きをリアルタイムで観察できる検査です。略してVEとも呼ばれます。
◎鉛筆ほどの細いカメラでのどを観察
検査では、鼻の穴から外径3〜4ミリほどの細い柔らかいカメラ(内視鏡)をのどの奥まで入れます。先端のカメラが、声帯やのどの動きを画面に映し出します。
そのうえで、ご本人にいつもの食事を一口ずつ召し上がっていただきます。「食べ物がどう通るか」「気管に入っていないか」「のどに残らないか」を、ごうホームクリニックの医師がモニター画面でその場で確認します。
検査時間は通常10〜15分ほどです。

◎痛みや負担は少なく、麻酔薬も使いません
「カメラ」と聞くと不安になる方も多いのですが、ご安心ください。
内視鏡を入れるときに鼻の奥に少し違和感を感じる方はいますが、痛みを訴える方はほとんどおられません。必要に応じてカメラの先にゼリー状の潤滑材を塗りますが、注射の麻酔や眠る薬は使いません。
検査が終われば、すぐにいつも通りの生活に戻れます。「胃カメラよりずっと楽だった」と感じる方が大半で、認知症のある方でも10分程度なら無理なく受けていただけます。
◎嚥下造影検査(VF)との違い
飲み込みの検査にはもう一つ、嚥下造影検査(VF)というレントゲンを使う方法があります。VFは口から食道までを全体的に見られる長所がありますが、レントゲン被ばくがあり、バリウム入りの特別な食事が必要なため、ご自宅では実施できません。
一方、嚥下内視鏡検査は、被ばくがなく、普段の食事をそのまま使って評価できます。さらに、ご自宅で何度でも繰り返せます。両者は目的に応じて使い分けますが、在宅医療の現場ではVEが主役です。
■なぜ「自宅で受ける」ことが大切か|在宅嚥下内視鏡の3つの強み
ごうホームクリニックでは、訪問診療の一環として、ご自宅で嚥下内視鏡検査を実施しています。これにはきちんとした理由があります。
◎いつもの環境・いつもの食事で評価できる
病院の検査室という非日常では、ご本人の本当の姿が見えにくいことがあります。
たとえば、緊張で食欲が落ちていたり、慣れない椅子で姿勢が崩れていたり、いつもと違う食事に戸惑っていたり。そうした状況で「危ない」と判断されると、実力より厳しい食事制限がかかってしまうことがあります。
一方、ご自宅のいつもの椅子で、奥様が普段作っている味噌汁を、いつものペースで召し上がっていただく。その姿を観察してはじめて、「ご本人にとって本当に安全な食べ方」が見えてきます。
◎通院・入院の負担がない
通院が難しい方、入院による環境変化で混乱しやすい認知症の方、終末期で外出が大きな負担になる方にとって、ご自宅で受けられることは大きな安心です。
ごうホームクリニックは在宅療養支援診療所として24時間365日体制で訪問診療を行っており、嚥下内視鏡検査もそのなかで完結します。検査だけのために移動する必要はありません。
◎認知症のある方でも受けやすい
入院や検査室への移動は、認知症のある方にとってとても大きな負担です。環境が変わると不穏になり、せん妄を起こすこともあります。
ご自宅という慣れた環境であれば、ご家族や見慣れた介助者がそばにいて、ご本人も落ち着きやすくなります。実際、ごうホームクリニックでもご家族から「家だから受けてくれた」というお声を多くいただきます。
■検査を受けたほうがよい3つのサイン
ご家族が「これって受けたほうがいいの?」と迷われるとき、目安にしていただきたいサインがあります。
◎むせる・咳き込みが増えた
食事中に水やお茶でむせる。食後にゴロゴロと痰がからむ。声が「ガラガラ」とかすれてきた。
こうした症状は、飲み込みの力が落ちはじめているサインの可能性があります。とくに、以前は問題なかったのに最近増えてきた、という変化は大切なサインです。
◎誤嚥性肺炎を繰り返している
半年に1回以上、肺炎で入退院を繰り返している場合、現在の食事内容・とろみの濃さ・食事姿勢のどこかにリスクが隠れている可能性があります。
嚥下内視鏡検査で「どこに問題があるか」を画面で確認できれば、繰り返す肺炎を予防する具体策が見えてきます。
◎食事に時間がかかる・体重が減ってきた
食事に1時間以上かかる、食べ残しが増えた、ここ数か月で2〜3キロ体重が減った。
このような場合、飲み込みづらさのせいで食事量が落ちている可能性があります。検査で「どの食形態なら無理なく食べられるか」を見極めることで、栄養状態の改善につながります。
■検査当日の流れ|ご家族にお願いしたいこと
嚥下内視鏡検査は、特別な準備が必要ない検査です。ただし、「いつも通り」を再現することが、検査の質を決めます。
◎準備はいつもの食事を3〜4種類
ご家族にお願いするのは、普段ご本人が食べている食事を3〜4種類ご用意いただくことです。
たとえば、お茶やお水(とろみがついていればそのまま)、お粥や軟菜食、味噌汁、好きなおかず、ヨーグルト、ゼリーなど。「うちはいつもとろみを薄くつけている」「お茶はストローで飲ませている」など、普段の介助方法もそのまま再現してください。
特別に何か作ったり、いつもと違う食べ方をする必要はありません。むしろ「いつも通り」でないと、本当の評価ができないのです。
◎当日30〜40分で完結
訪問日の流れはおおむね次の通りです。
- 挨拶・体調確認(5分):医師と看護師がうかがい、体調を確認します。
- 検査前の準備(5分):いつも食事をする椅子に座っていただき、食事を手元に並べます。
- 内視鏡を鼻から挿入(1〜2分):カメラ先端にゼリー状の潤滑材を塗り、ゆっくり鼻から入れます。
- 観察と試食(10分):水→とろみ水→ヨーグルト→お粥→おかず、と少量ずつ召し上がっていただきます。
- 抜去と結果説明(5〜10分):カメラを抜き、その場で動画を一緒に見ながら、「ここが安全」「ここが要注意」を具体的にご説明します。
合計でだいたい30〜40分です。
◎「ありのまま」を見せていただくことが一番大切
ご家族の役割で一番大切なのは「ありのままを見せていただくこと」です。
「先生に良いところを見せなきゃ」と気を張る必要はまったくありません。むしろ「いつもむせている水の飲み方」「ついやってしまう早食い」「うっかり多めにすくってしまうスプーン」――そうした「いつも通り」の場面こそが、本当の評価につながります。
普段の食卓を、そのまま再現してください。
■結果からわかること|翌日からの食事が変わる
嚥下内視鏡検査の最大の価値は、検査して終わりではない点にあります。翌日からの食事を変える具体的な指針が、その場で手に入ります。
◎食形態の見直し
もっとも多いのは、食形態の調整です。
「水分にとろみをつける」「お粥を軟飯に上げる、または下げる」「おかずをきざみからペーストに変える」など、ご本人に合った形態がはっきりします。「とろみが必要」と分かれば、市販のとろみ調整食品の選び方や濃度の目安まで、その場でご家族に具体的にお伝えします。
逆に、「実はもうとろみは不要」と分かれば、ご本人とご家族の心理的負担が大きく減ります。
◎食事姿勢の工夫
「ベッドの背を30度起こして、頭をやや前に傾ける」「自力で座位、軽く顎を引く」「右側を向いて食べる」など、ご本人の体に合った安全な姿勢が見えてきます。
これはご家族が毎日繰り返す動作ですので、写真や動画で記録して共有すると定着しやすくなります。
◎「実は食べられる」発見の喜び
入院中に「誤嚥リスクが高い」と判断され、絶食や流動食のみの指示で退院された方が、ご自宅で嚥下内視鏡検査を受けると「軟菜食なら十分食べられる」「おにぎりも大丈夫」と判明することは珍しくありません。
病院の検査室では、緊張や環境変化で本来の力が出にくく、結果的に「安全側に振った絶食指示」になっているケースが多いのです。ごうホームクリニックの嚥下内視鏡で実力を確認できれば、食事の楽しみを取り戻せる可能性があります。
◎「危ない食べ方」の特定と対策
逆に、ご本人が「これは大丈夫」と思って食べていたものが、画面で見ると気管に入りかけている――そんな場面が見つかることもあります。
ご家族が映像を一緒にご覧になり、「これは止めよう」「この食べ方は変えよう」と納得して理解することで、誤嚥性肺炎の予防に直結します。
病院の検査室での評価
非日常の環境・慣れない食事
→ 実力より厳しい判定になりがち
在宅での嚥下内視鏡
いつもの椅子・いつもの食事
→ 本当の力に即した判定ができる
■ごうホームクリニックの取り組み|在宅で続ける「食べる楽しみ」
ごうホームクリニックは、名古屋市天白区の訪問診療クリニックです。在宅療養支援診療所として24時間365日体制で、嚥下内視鏡検査もご自宅で実施しています。
◎多職種連携で支える「食べる」
嚥下内視鏡検査の結果を最大限に活かすには、医師ひとりでは不十分です。ごうホームクリニックでは、訪問看護師・言語聴覚士・管理栄養士・ケアマネジャー・ヘルパーと連携して、検査結果を日々の食事ケアに落とし込みます。
訪問看護師は、検査直後の食事介助に同席し、姿勢のサポートや訓練の継続を支援します。ご本人の好物を、安全に楽しめる形に変えるレシピのご相談もお受けします。
◎管理栄養士2名による在宅訪問栄養指導につなげられます
ごうホームクリニックには、管理栄養士が2名在籍しています。嚥下内視鏡検査で食形態の方針が決まったあとは、そのままご自宅への在宅訪問栄養指導につなげることができます。
在宅訪問栄養指導でできること:
- 飲み込み機能に合わせた具体的な食事提案(検査結果と直接連動)
- ご家庭での調理指導(とろみのつけ方・刻みの程度・温度の工夫)
- 栄養補助食品のご紹介(少量で必要なエネルギー・たんぱく質を補う製品)
- ご本人の好み・嗜好を尊重したメニュー作り(楽しみとしての食事を守る)
- ご家族の介護負担を減らす作り置きの工夫
訪問頻度は1か月に2回までを目安に、1回あたり30分〜1時間程度ご自宅でうかがいます。介護保険または医療保険が適用されますので、通常の訪問診療と同じ自己負担割合でご利用いただけます。
「検査で食形態が分かっても、実際にどう作ればいいのか分からない」というご家族の声に、管理栄養士が現場で寄り添います。医師の検査 → 管理栄養士の調理指導 → ご家族が毎日続けられる食卓という流れを、ごうホームクリニック内で完結できる体制が、当院の強みです。
◎終末期にも寄り添う「最後の一口」
人生の最終段階では、「リスクがあっても、本人が望むなら口から食べる」という選択も尊重されます。
ごうホームクリニックでは、嚥下内視鏡で誤嚥リスクをご家族と画面で共有したうえで、「それでも好きなものを少しだけ」と決めるご家族の意思決定を支えます。「食べさせる/食べさせない」の二者択一ではなく、「どこまで・何を・どう食べるか」を細やかに決めるための道具として、嚥下内視鏡を使っています。
ご本人が大好物だったメニューを、誤嚥リスクを抑えた形に管理栄養士が再構成してご提案することもあります。「うな丼」「お寿司」「お刺身」など、ご家族の思い出に残る一口を、安全な形で叶えるお手伝いをしています。
◎訪問エリア
ごうホームクリニックは、名古屋市16区および日進市・東郷町・豊明市・刈谷市・知立市を訪問エリアとしています。嚥下内視鏡検査をご希望される方は、まずはお電話・LINE・お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
■よくあるご質問(FAQ)
◎Q1. 嚥下内視鏡検査は痛いですか?
A. 痛みを訴える方はほとんどおられません。鼻の奥に少し違和感を感じる方はいらっしゃいますが、検査時間は10〜15分ほどで、終わればすぐにいつも通り過ごせます。注射の麻酔や眠る薬は使いません。
◎Q2. 認知症があっても受けられますか?
A. はい、受けていただけます。ご自宅という慣れた環境で、ご家族がそばにいる状況であれば、認知症の方でも10分程度であれば無理なく受けていただけることが多いです。実際、入院検査が難しい方こそ、在宅嚥下内視鏡の意義が大きくなります。
◎Q3. 寝たきりでも検査できますか?
A. はい、ベッド上での検査も可能です。完全に横になったままでは誤嚥のリスクが上がるため、ベッドの背を30〜60度ほど起こせる場合に検査をお勧めしています。起き上がれる方はいつもの椅子でうかがいます。
◎Q4. どのくらいの頻度で受けるべきですか?
A. 一律の決まりはありませんが、誤嚥性肺炎を繰り返している方や食事内容を変更した方では、数か月後に再評価を行うことがあります。状態が安定している方では年1回ほどを目安に、嚥下リハビリの効果判定として活用するケースもあります。
◎Q5. 検査前は食事を抜く必要がありますか?
A. いいえ、絶食は不要です。むしろ、いつも通りの食事のリズムで過ごしてください。ただし、検査直前の食事は控えめにしていただくと、試食を伴う検査がスムーズに進みます。
◎Q6. 保険は使えますか?
A. はい、健康保険が使えます。嚥下内視鏡検査は保険診療として算定できる検査ですので、通常の訪問診療と同じ自己負担割合(1〜3割)でお受けいただけます。具体的な金額はお気軽にお問い合わせください。
◎Q7. 結果はいつわかりますか?
A. その場でわかります。検査中の動画をご家族と一緒に画面で確認しながら、「ここが安全」「ここが要注意」を医師がその場でご説明します。書面でのご報告書もお渡しできます。
◎Q8. 検査のあと、栄養指導も受けられますか?
A. はい、ごうホームクリニックの管理栄養士2名による在宅訪問栄養指導につなげられます。検査で判明した食形態に合わせて、調理の仕方・とろみのつけ方・栄養補助食品の使い方を、ご自宅でご家族と一緒に確認します。介護保険または医療保険が適用されます。
■「最後まで口から食べたい」を支えるために
「むせる」「飲み込みが心配」――そんなご家族のお悩みは、見える化することで多くが解決の糸口を得られます。
ごうホームクリニックは、訪問診療の一環としてご自宅で嚥下内視鏡検査を実施しています。さらに、検査後の食事の組み立ては、管理栄養士2名による在宅訪問栄養指導でしっかりと支えます。検査の目的は「食べさせるか/食べさせないか」を白黒つけることではありません。ご本人とご家族が、納得して「これからの食事」を選び続けるためのお手伝いです。
名古屋市・日進市・東郷町・豊明市・刈谷市・知立市で、ご家族の飲み込みにご不安がある方は、どうぞお気軽にごうホームクリニックまでご相談ください。
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ごうホームクリニック
院長 伊藤剛

